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熱海の課題とatamistaの取組み

静岡県熱海市は伊豆半島の入口に位置し、温泉、海、山の恵まれた自然環境などの観光資源をもつ国内有数の温泉観光地であるが、人口減少、少子高齢化とそれ に伴う地域コミュニティの衰退、観光産業の停滞による地域経済の低迷など、日本が抱える課題の10年以上先を行っている。

この地域に求められているのは、過去の団体旅行による大量消費型、歓楽型観光地から脱却し、多様化した個々人のニーズを満たすことのできる「持続可能な滞 在型保養地」へと変革していくことである。そのためには宿泊施設の滞在型への転換や、健康・美容・医療・教育などの産業の育成、それを担う人財の育成が必 要である。しかし、現状では未だ短期的な景気刺激策や集客プロモーションに地域の資金、資源が投入されている。熱海に必要なのは、地域の資源を磨きあげ、 事業・サービスを育成し、人財を育成することであり、そのための持続可能な地域づくりの仕組みである。そして、その地域開発を担う地域プロデュース機関の 存在が必要である。

地域の産業創出・人財育成の成功モデルを示し、地域づくりの原資となる収益を上げることより、地域の未来を見据え長期的な視点で行動できる地域プロデュー ス機関の創出を目指す。

▼歴史と文化を持ち、観光資源に恵まれた国内有数の温泉観光地「熱海」

静岡県熱海市。伊豆半島の入口に位置し、温泉、海、山の恵まれた自然環境などの観光資源をもつ国内有数の温泉観光地。古くから湯治場として栄え、明治時代 以降は保養地として、要人・文人に愛された。人口約4万人。産業は観光関連が8割以上。東京から最も近い観光地の一つ。

近年、不動産バブルが起こるなど、昭和50年代から別荘地としても親しまれ、現在も団塊世代の移住者、別荘族が多く滞在している。国内で唯一の別荘税を持 ち、別荘所有者は1万世帯。

▼経済低迷、コミュニティ衰退など日本の10年以上先の課題を抱えた地域

昭和50年代から人口減少を続け、近年は人口約4万人のうち毎年1%程度の人口減少、高齢化率42%で毎年1%以上上昇している。人口減少、高齢化率、出生率、生活保護者率、空き家率等の数字が県内でもワースト1、2位という状況。これは2050年の日本の姿とも言われる課題先進地域です。

主要産業である旅館を中心とした観光産業の売上減少、事業者数の減少。
ピーク時600万人以上あった宿泊客数は、昭和50年頃から減少を続け現在では約300万人に半減。顧客単価の減少も重なり、売上は大幅に減少している。宿 泊事業者数も大幅に減少。旅館・商店主の高齢化、売上減少により投資余力もなく、近い将来の産業としての魅力低下の危険もある。

観光産業の発展による開発により農地面積や漁場が減少している。また、高齢化、後継者不足、第一次産業の収益性の低さにより、農家、漁師数も減り続けてお り、遊休農地の増加している。

町内会や奉仕団体等の相互扶助ネットワークも残っているが、組織率は低下。地域経済の低迷、市財政の逼迫により、市場サービスへの代替も難しく、今後、住 民生活への影響も必至。

過去に機能した旅館有力者による地域の意思決定の仕組みも、地域への多様な参加者の増大や旅館産業の衰退と共に機能不全に。個別バラバラの行動、地域とし ての方向性が欠如している。

▼従来の消費型観光地でもベッドタウンでもない、第三の道「持続可能な滞在型保養地」

過去の消費型観光地から脱却し、「持続可能な滞在型保養地」へと変革するためには持続可能な地域開発(地域づくり)の仕組みをつくることが必要。そのため に人財育成、事業創出の成功モデルをつくること、地域の収益が地域開発に資金循環するモデルをつくることが課題。

主産業の観光産業は消費型、歓楽型の産業として発展し、昭和50年代までは成功を収めてきた。しかし、価値観の多様化による団体の宴会歓楽型から個人・家 族による体験・交流型への変化、また、海外旅行者の増加、国内観光地間の競争激化により観光客、売上の減少が続いている。
移住者、来訪者、住民が求めているのは、熱海らしさを活かした人のココロとカラダの健康、人のつながり、自然を再生するような場としての「持続可能な滞在 型保養地」への変革である。

「持続可能な滞在型保養地」へと変革するためには宿泊施設の滞在型への転換や、健康・美容・医療・教育などの生活産業の創出、移住者・別荘保有者向けサー ビスの向上、第一次産業の再生、交通など社会インフラの整備など様々な取り組みが必要となる。しかし、税金を使って花火を年に10数回行うことに象徴され るように、未だ短期的な景気刺激策や集客プロモーションに資金、資源を投入している。将来投資を怠っているため、将来的な地域の魅力低下の懸念がある。

熱海に必要なのは、地域の資源を磨きあげ、事業・サービスを育成し、人財を育成するための持続可能な地域開発(まちづくり)の仕組みである。また、そのよ うな産業育成、人財育成を長期的な視点に立ち地域開発を担う、観光まちづくり会社のような地域プロデュース機関の存在が必要である。地域プロデュース機関 は一朝一夕にできない。産業創出・人財育成の成功モデルを示すこと、そして地域の事業利益が地域開発に資金循環するモデルなど持続可能な地域開発のための モデルづくりこそが私たちが取り組む課題である。

▼地域経営としての(観光)まちづくり会社が複数誕生し、継続的な地域開発ができるようになる。
・利益が地域に回る仕組みをつくることで、地域開発のための税金補助金に頼らない資金が生みだし、その再投資により地域の魅力が向上する。
・民間投資受け入れなど、地域開発のための資金調達が可能となる
・地域の観光予算、地域資源開発のためのヒト・モノ・カネ・情報が集約されることで、専門的・戦略的な地域の人財育成、産業育成が可能となる
・官、民、公の間でのコーディネータ機能を果たすと共に、NPO・市民事業に対する支援・拠点機能、資金提供機能となり、市民活動が活性化する

▼滞在型保養地としての方向性にスタートを切ることができる
・社会環境・地域の現状を踏まえた上での地域経営のための意思決定と行動がとれるようになる
・それにより、ウェルネス(健康)産業、自然産業(第一次産業やそれに関連した産業など)、文化産業が育ち広がり、住民、来訪者生活が向上すると共に、雇用機会が生まれる。
・ウェルネス、自然、文化の産業を育成により、自然や文化を守り、乱開発が抑止される。
・熱海のまちづくりの外部への技術移転や展開により他地域にも貢献できる。
・滞在交流時間・交流人口の増大により地域経済が向上する

▼地域のブランドイメージの質的な転換
・滞在型保養地としてのブランドイメージが確立され、熱海への来訪者が増加する。
・持続可能な地域開発モデルを構築することで、他の地域への展開も可能となり、伊豆地域、アジア地域などへ地域づくりの仕組みを輸出。それによりアジアの魅力的なまちトップ10に入る。